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評価:
森 博嗣
新潮社
¥ 820
(2004-01)
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内容(「BOOK」データベースより)2113年の世界。小型飛行機で見知らぬ土地に不時着したミチルと、同行していたロイディは、森の中で孤絶した城砦都市に辿り着く。それは女王デボウ・スホに統治された、楽園のような小世界だった。しかし、祝祭の夜に起きた殺人事件をきっかけに、完璧なはずの都市に隠された秘密とミチルの過去は呼応しあい、やがて―。神の意志と人間の尊厳の相克を描く、森ミステリィの新境地。
初めての森博嗣さん!読んだのは単行本版のほう。
装丁と「女王」「百年」「密室」っていう言葉の並びがツボ。ミステリ好きの心をくすぐる。
ミチルとロイディの設定が、BL的にものすごくおいしい設定だったので、穿った読み方ばっかりしてました(最低)。序盤のちょっとわがままになってるミチルとか、ロイディをいじめるミチルとか、すごく良かったです。でもその辺(当たり前だけど)狙いすぎず、な適度なとこが良かった。
肝心な内容のほうは、森博嗣さんは人気があるので結構期待してたんだけど、その期待を上回るおもしろさだった!現在から約百年後の世界で、約百年間外界と隔絶された女王が統治するコミュニティ、っていう設定が好きすぎる。
人間の生死に関する議論もすごく興味深かった。どうして生きているのかどうして死ぬのかどうして人を殺すのか。
好きな箇所があったので抜粋。「生きることは、それほど難しいことでもないのに、何故ここまで難しくしてしまう機構が生まれたのか。何のために、生きること以外の、あるいは以上の営みをするのか。頭脳の肥大化の目的は何なのか。生を越えて、それが求めるものは何だろう。どこを目指しているのだろう」一個の人間を形成するシステムの複雑さへの不可解を問い、更にその問いを発しているのはその人間自体である、というクラインの壺のような(メビウスの輪のような)表裏のない、境界線のない疑問を提示している部分が好きだった。どこまでが自分か、どこからが他人かという問いにも似てる気がする。そういえば本文中に、どこまでの事象を自分に関わる個人的なこととして処理するか、どこからを他人事として処理するか。その境界線を決めるのも自分で、それが人間の尊厳だ。とか言ってる部分もあった気がする。確かにその線引きって、普段何気なくやってしまってるけど、よく考えると自分と全く関係ないことなんてこの世に有り得ないしね。なんか哲学的…!
続編も出てるので読みまーす!今更森さんにはまりそうです。