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評価:
天童 荒太
文藝春秋
¥ 1,700
(2008-11-27)
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内容(「BOOK」データベースより)
聖者なのか、偽善者か?「悼む人」は誰ですか。七年の歳月を費やした著者の最高到達点!善と悪、生と死が交錯する至高の愛の物語。
近い時期に読んだからかもしれないけど、なんとなく平野圭一郎さんの『決壊』に似ているように感じた。人間の善悪と死を描き、『どうにもならないことがある』という虚無感が二つの作品にはある。でも、『決壊』が徹底的にニヒリズムを突き詰めているのに対して、この作品には僅かな救いがある。それが愛とか情とかいうもので、不確かなものだけど、人間はそれに縋らずにはいられないし、最期の瞬間に求めるのは、結局そういうものなのかもしれないと思う。
ていうか逆に言うと、愛とか情とかが排除された『決壊』はすごい作品だってことなのかも。
まだ自分は若いし、比較的平和な日本に住んでいるから、『死』を自分に訪れるものとして具体的に考えたことはないし、考えることもできないと思う。けど、もしも静人のような人がいたら、死に際しての苦しみとか痛みみたいなのが少しは和らぐかもしれない。そう考えると『忘却』が人間にとっては一番恐ろしいものなのかなぁ。