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評価:
平野 啓一郎
新潮社
¥ 1,890
(2008-06-26)
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評価:
平野 啓一郎
新潮社
¥ 1,890
(2008-06-26)
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内容(「BOOK」データベースより)2002年10月、全国で次々と犯行声明付きのバラバラ遺体が発見された。被害者は平凡な家庭を営む会社員沢野良介。事件当夜、良介はエリート公務員である兄・崇と大阪で会っていたはずだったが―。絶望的な事件を描いて読む者に“幸福”と“哀しみ”の意味を問う衝撃作。
徹底的なニヒリズム…!
おもしろかったけど、決して快い読書ができる本ではなかった。
はっきり言って読むのが辛い。きつすぎて途中寒気が…。
平野啓一郎さんは初めて読んだけど結構好きだった。
今作はドストエフスキーの影響を受けた作品らしいですが、確かに現代版『罪と罰』とも言えなくもないかも。「殺意」を誰か特定の個人から個人に向けられたものではなく、「純化された殺意」「世界の殺意」のように匿名で無名の純粋な意思(意思?)に昇華させているのが『罪と罰』のラスコーリニコフ的だと思う。
インテリの転落とか、ただラスコーリニコフを踏襲するだけじゃなくて、いじめ、現代人の没コミュニケーション、ネット社会、マスコミの執拗な報道、冤罪とか死刑制度とか現代的な問題提起に溢れた、まさに“現代版”を冠するにふさわしい本なのかも。
しかし怖いな…。「殺人」という目的のために「殺人」が行われるなんて恐ろしい。自分の利益(例えば誰かが憎いからとか、金銭的な事情とか)のために罪を犯すほうがまだ人間的だと思う(決して犯罪を擁護しているわけではなく)。でも今はきっとそんな「純化された殺意」による犯罪が多いんだろうな。なんか悲しいよ!
他にすごく個人的な感想として、遺族と遺体の対面のシーン、あと良介のビデオなんかはものすごく心が痛んだ。あまりに辛くて読むのやめようかと思った。このあたりは平野さんの文章力なんだろうと思う。
とにかく色々考えさせられる本でしたー。文庫化したら欲しいなー。