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評価:
ロバート・ネイサン
東京創元社
¥ 798
(2005-05-23)
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内容(「BOOK」データベースより)1938年、冬のニューヨーク。貧しい青年画家イーベンは、夕暮れの公園で、一人の少女に出会った。数日後に再会したとき、彼女ジェニーはなぜか、数年を経たかのように成長していた。そして、イーベンとジェニーの時を超えた恋が始まる…詩人ネイサンの傑作ファンタジイ。妻を亡くした童話作家とその子供たちの、海の精霊のような女性との交流を描く『それゆえに愛は戻る』を併録。
これファンタジーなのか。ミステリーかと思った。
恩田さんが解説を書いてたので読みました。恩田さんも解説で「喪失について」と題しているように、「喪失」がひとつのテーマになっている。
著者のロバート・ネイサンは詩人だけあって、情景の描写が丁寧且つ独特の雰囲気がある。表題作『ジェニーの肖像』では季節の移り変わりを、『それゆえに愛は戻る』では海や浜辺の丘をまさに詩的に表していると思った。
どちらの主人公にも共通する、喪失に対する諦観のようなものが話をねちっこくしすぎず、そして主人公を魅力的に見せている。
結末は『それゆえに愛は戻る』のほうが好きだけど、総合的には表題作のほうが好き。見る見る年を取る過去から来たジェニーに対する喪失への予感。時間の隔たりほど遠いものはなく、主人公は不安に苛まれている。このあたりの苦悩が好き。
悲しみや悩みは一人で背負うべきもので、喜びや愛は分け合うもの。