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評価:
平野 啓一郎
講談社
¥ 1,890
(2009-07-10)
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内容(「BOOK」データベースより)
2033年、人類で初めて火星に降り立った宇宙飛行士・佐野明日人。しかし、宇宙船「DAWN」の中ではある事件が起きていた。世界的英雄となった明日人を巻き込む人類史を揺るがす秘密とは?愛はやり直せる。
平野さんの書く小説は、まさに現代にふさわしい小説だと思う。
この「ドーン」は勿論、「決壊」でも現代、あるいは近未来における科学的な発展に伴う弊害に焦点を当てつつ、人間(人類?)が抱える普遍的な問題を描いている。こういった文学の中で社会への問題提起がなされるべきだ、とは思わないし、必ずしも必要なものだとは思わないけど、未来を予見するような平野さんの小説はこの現代社会にあって書かれるべくして書かれた、という感じがする。確かに普遍的な問題を描いていることで、既に語り尽くされた感のある物語と言えなくもないけど、これは今この瞬間に読まれてこその価値がある作品のような気がする。
今作中では、「個人」=「individual」に対する「分人」=「dividual」という概念が描かれている。「分人」というのは、「個人」が使い分ける人格のようなもので、例えば一人の人間が家族の前、友人の前、上司の前等で、普通それぞれに対して適切な態度を使い分ける、その一つ一つを「分人」と呼び、「個人」は「分人」の集合であると述べられている(さらにこの考え方を「分人主義」=「dividualism」とも呼ぶ)。
個人的に、火星探査船「ドーン」をテーマにした同人(!?)小説がネット上で書かれ、読まれ、という展開に笑った。すごくリアル。